台湾レポート

1991年から1992年にかけて、私はゴルフ場開業準備責任者として台湾に赴任していた。 そのゴルフ場は、T高爾夫球場(T Golf Course)。 台湾の南の大都市 高雄(カオシュン)から、東に車で約1時間の所に有る。 私が台湾で遭遇した笑える体験を、平易な?日本語で赤裸々に綴ります。

051 【苦悩】

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051【苦悩】

研修中のキャディには、「プレイヤーがアドレスに入ったら喋らない。動かないように!」と口を酸っぱくして言い続けている。

果たして、言い続けると口は酸っぱくなるのだろうか?
口を酸っぱくすると、言い続けられるのだろうか?

今日は1日で素晴らしい体験をさせていただいた。
まず午前中のキャディ教育、11番グリーンにて。

キャディマスターの朱課長が長いパットを残した。
キャディがピンを持つ。

朱課長がアドレスに入った。
ピンを持ったキャディが、「朱課長、請っ!(ツーカーツァン、チーンッ!)」(朱課長、どうぞっ!)と言ったその時だった。

交代待ちのキャディの中から、「ゴエ〜エッ」という特大のゲップが鳴り響いた。
さすがに、状況が状況だっただけに、今回はキャディから笑いが起こったが、朱課長はそれをものともせずパットを打ち切った。

彼の集中力は賞賛に値する。
私は力が抜けて、その時は怒る気にもならなかった。

午後は机の上の仕事が有ったので、私はキャディ教育には出なかった。
三時半頃になって、コース巡回に出た。
12番のPar3で、キャディ教育の組に出会った。

ティショットを見た後、キャディのグリーン上での様子を観察した。
1打目をオーバーさせた朱課長(なんと、この日2ラウンド目!)がアプローチのアドレスに入った。

その時、静寂を引き裂く「ブオッ!」という炸裂音が、辺りに鳴り響いた。
屁の発生源は、グリーン近くに居たキャディだった。

しかし、またしても朱課長はキッチリ打った。
さすがである!

キャディ達は、朱課長の集中力を試しているのだろうか?
或いは、集中力を養う為の朱課長からのリクエストなのだろうか?

キャディ全員を前にして「ゲップや屁はするなっ!」と言うと、「どうして?」と言われかねないので、「せめて、プレイヤーがアドレスに入ったら、ゲップや屁は音がしないようにやれっ!」と注意すべきかどうか、私は悩みながらこれを書いている。


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050 【OUT・IN】

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050【OUT・IN】

T高爾夫球場メンバーによるゴルフ場オープン前の試打が10月11日(金)より始まり、最初のピークは10月13日(日)だった。
20組63人がプレイした。

陳支配人、張業務部長も朝からスタートハウス周辺に来て、顔見知りのメンバーと御歓談されていた。

しかし、知らないメンバーなどに対しては挨拶もしない。
日本人のこの私だけが「ニイハオ」と愛想を振りまいていた。

その時、これからティインググラウンドへ向かおうとするメンバーが、陳支配人に「スタートはアウトかインか?」と尋ねた。

台湾は基本的にワンウェイのプレイなので18ホールの場合、アウトコース(1〜9番ホール)からスタートする。

もっとも現在プレイできるのは6番・7番ホール(許可の出ていない土地を造成した為!)を除く16ホールだけである。
メンバーの質問に対し、陳支配人は躊躇せず「IN」と答えていた。

私はこの時、訂正すべきかどうか迷った。
訂正してしまうと支配人のメンツを潰すことになりかねないからである。
同時に、私の落胆ぶりは皆さんのご想像の通りである。
仕方がなく、私は後でそれとなく指摘する策を取った。 

少しして、今度は陳支配人がスタート担当の楊(ヤン)小姐に何か言っている。

聞いていると、どうやら、受付けもキャディも慣れていないので、プレイヤーの待ち時間が長くなり、このスタートハウス付近に溢れているから、「アウトコース・インコース両方から同時にスタートさせるように!」と言っているようだ。

しかし、日本式のこの方法はワンウェイに比べ、ある程度のノウハウを必要とするもので、そう簡単に出来るものではない。
結局は諦めたようだった。  

私はプレイが順調に流れているかを見るために、林(リン)小姐のファミリーバイクを借りてコースに巡回に出た。

コースを巡回している最中に、ふと私の頭に不安がよぎった。
コース内の正式な標示板がまだ納品されていないため、現在使用しているコース内の標示板は場務部のお手製のものである。

『確か1番のティへ続く歩経路に“OUT方面”“IN方面”を示す標示が立っていたけど、まさかあれも逆じゃねーだろうな?』と考えたのである。

急いで1番のティ近くに戻ると、案の定、“IN方面”の標示になっている。

うまい具合に陳支配人と張さんが立ち話をしていたので、「これ、逆ですよっ!」と言ってあげた。
二人とも直ぐには言っている意味が分からないようだった。

でも良く考えると、陳さんはこれを知っていて「IN」と言ったに違いない、と信じたい。


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049【お犬様の悲劇】

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049【お犬様の悲劇】

10月11日からゴルフクラブ会員による試打期間が始まった。
クラブハウスがまだ完成していない為、駐車場に隣接する運転手控室をキャディ室とスタートハウスとして代用している。

事務所が間借りしているコース管理棟とクラブハウスの中間に、運転手控室がある。

夕方、キャディミーティングを終えてコース管理棟に戻ってくると、人だかりが有る。
近付いて覗いてみると、軽トラックの荷台に幾つかの檻が据え付けられていて、その中に沢山の犬が詰まっている。

『見るからに野良犬!』という犬ばかりである。

張さんが近くにいたので聞いてみた。
「何ですか? これ。」

すると、「犬を専門に捕まえる仕事をしているらしい。」という答えが返ってきた。

車の傍らには短パンに草履、上半身は薄汚れたランニングを着ているオッチャンが立っていた。

ゴルフコース造成の現場にも野良犬が多いので、「ここの犬を捕りに来たんですか?」と尋ねると、「いや、違うらしい」と言う。

『では、なぜここに居るのだろう?』と素朴な疑問を感じた。

犬達は狭い檻に詰め込まれて、まるでツイスターゲームのような無理な体位を強いられていた。

私が冗談半分に、「捕まえて、食っちゃうんですかねぇ?」と言ったら、「そうらしい。」と答えていた張さんの目は笑っていなかった。


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