台湾レポート

1991年から1992年にかけて、私はゴルフ場開業準備責任者として台湾に赴任していた。 そのゴルフ場は、T高爾夫球場(T Golf Course)。 台湾の南の大都市 高雄(カオシュン)から、東に車で約1時間の所に有る。 私が台湾で遭遇した笑える体験を、平易な?日本語で赤裸々に綴ります。

045 お犬様 in Kゴルフクラブ

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045 【お犬様 in Kゴルフクラブ】

台湾には犬が多い。
そこら中に居る。
きっと人の数と同じくらい居る。

それも「一匹一匹の種類が全て違う!」と言っても過言ではない。
「全てが雑種であり、一匹の犬の中にあらゆる種の特徴が見出だせるが、二匹として同じ種はいない。」という印象を受ける。

ちょっと見は、「コリーに似てる」とか、「テリアかな?」という具合である。

先進国では、いろいろな種を掛け合わせて新種を造り出すという研究が行われているが、ここ台湾に於いては人為的な方法によらずとも、ご本人自ら本能の赴くままに“掛け合わさって”いる。

例えば、近所で子犬が生まれたとしたら、その親を当てるというクイズも新しい趣向でおもしろいと思う。

更に、どの犬も毛並みが綺麗に揃っているということはなく、いかにも病気を持っていそうである。

『決して健康ではないが、丈夫!』という訳である。

ここKゴルフクラブも例外ではなく、常時数匹のお犬様が徘徊している。

10番ティ横のベンチの背もたれに肘をついてコースを見ていた時、一匹の白い犬が9番グリーンの方へ降りていこうとしていた。

断じて芝ではなく雑草の斜面をジグザグに、あたかもスキーのパラレルターンのように降りていく。

良く見ると彼(彼女?)は右後ろ足が悪いようで、使っていない。
もし足が不自由でなければ、きっと見事なウェーデルンを披露してくれたに違いない。
   
しばらくして、我々が座っていたベンチの下に、スキー犬がいつの間にか戻ってきて、既に熟睡しているのをDキーパーが発見した。

まるで忍者のような奴である。
いたずら心を出したDキーパーが、彼の腰あたりを揺すった。
しかも足で!

しかし、彼はピクリともせず寝ている。
日本の犬なら、そばに人間が来るだけでビクリとするはずである。

諦めずに、足で揺すり続けていると、彼が突然目を開け顔をこちらに向けた。
私が『やったぜっ!』と思ったのも束の間、彼はまた熟睡してしまった。

彼はDキーパーに反応したのではなく、鼻先に来た虫が鬱陶しかったのだ。

自分を人間だと思っているらしい。
或いは、私たちを犬だと思っているのか?

そしてその傍らには、木の根元を一心不乱に激しく掘り続ける一匹の犬がいた。


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044 Kゴルフクラブ

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044 【Kゴルフクラブ】

『10/11からのメンバーによる視察プレイを前に、芝の状態を万全にしておこう!』ということで、日本から弊社のグリーンキーパーD氏が忙しい中を台湾まで来て下さった。

同じ時期に日本のA造園のT氏も現場に来られていた。

T氏が、現場でDキーパーに言った。
「この間、高雄(カオシュン)のKゴルフクラブの芝の状態を見てきたけど、グリーンの芽が詰まっていて、良かったよ!」と。

「それじゃあ商売敵の状況視察に行こう!」と、翌日土曜日の朝、Dキーパーと当TP高爾夫球場の呉キーパー、そして私の3人でKゴルフクラブを訪れた。

最近までKゴルフクラブに所属していた台湾人のTプロと9時に待ち合わせをしていたが、少々早くKゴルフクラブに到着してしまったので、クラブハウス前のドライビングレンジ(練習場)を観察していた。

ドライビングレンジと駐車場は高さ30cmほどの塀で仕切られているが、数台の車がその上へバンパーを乗り上げるかたちで駐車していた。

『大らかで、いいなー!』と思った。

レンジはまるで、町なかの練習場のような賑わいだった。
子供連れが弁当持参で来ているし、何故かフラフープも置いてあった。

そうしているうちにTプロが奥さんを連れて登場した。

この時にクラブハウスの外観を良く観察したが、そこら中シミだらけで、まるで古い小学校のプールの更衣室のようであった。

そして、屋根には草も生えている!
ナーセリー(植物等を育成するエリア)ではなさそうだが?

これが伝統の重みというものなのだろうか?

クラブハウスを抜けて練習グリーンを見た。
『どんなに綺麗だろう?』と思い足を運んだが、気が抜けた。

グリーンではなく、“ブラウン”と呼ぶべきか?
芝がスカスカで、上から見ると目土(グリーン等に芝と混在する砂利)が丸見えである。

所々に芝を貼って補修した跡があり、まるでシップ薬を貼った様である。
おまけに苔が生えている箇所もある。

次に18番グリーンを見た。

グリーンが四角で小さい。
ガードバンカーは長方形で、バンカーショット跡を均した形跡もない。

D氏は客の合間を縫って、18番グリーンの写真を撮りにいっていた。

その後、スタートハウスの方に移動した。

1番と10番のティインググラウンドが約15mしか離れておらず、その中間にスタートハウスがあるが、歴史を感じさせる小屋である。  

このコースは高雄市内から車で直ぐなので、特に土日祝日は客が多いようだ。

1番から18番までワンウェイで回しているので、1番ティ周辺にはスタート待ちの人々がウロウロしている。

私たちは10番のティ脇のベンチで暫く観察することにした。

まず驚いたのは、北京語のラップが聞こえてくる。
その方向を見ると、例の歴史的建造物のスタートハウスだった。

中を覗き込むと人がいないのに白黒のテレビがつきっぱなしになっていて、マクドナルドのCMをやっていた。

この様に、スタートするプレイヤーはテレビの音をBGMにティショットに専念できるという心憎い演出である。

10番は約10mの打ち下ろしである。
ティの第一印象は何と言っても、『狭い!』という事である。

今日使用しているティは一番高い位置にあるもので、広さは50平米も無いと思われる。

さながら段々畑のように、このほかに二つのティが有り、レディスティがフェアウェイとほぼ同じレベルに有る。

そして何故か、ティの右端に大きな姿見がある。
ここでスウィングのチェックをするのだろうか?

しかし、それとは裏腹に、ティ左側には『禁止空桿(素降り禁止)』という標示がある。

客も下手な人が多く、ティショット前の素振りでターフ(芝)を取ってしまうためか、ショートホールでもないのに、ティはハゲだらけの上、デコボコである。

10番フェアウェイの右は池、左側手前には釣り堀のような池があり、時々モーターの唸る音がティまで聞こえてくる。

釣り堀の左脇が、打ち下ろしの9番ショートホールのグリーンである。
こんなに混んでいるのに、コンペのようである。

キャディはお客に対して1対1で付いている。

ニアピンの旗がグリーンの脇に立っていた。
この組は誰もワンオンしなかったらしい。

一人の客がアプローチを釣り堀に入れた。
キャディが物干し竿のような棒の先に網を付けたものを持ってきて、慣れた手つきでボールを救出した。

ようやく4人が皆オンした。
9番ティには既に二組が待っている。

『ティで待っている後ろの組に打たせるだろう。』と思って見ていると、なんと続行である。

最初の一人が、カップにナイスインした。
するとキャディは、持っていた客のクラブ(ピッチング?)でカップからボールを“クルリンッ”とほじくり出した。

「お見事っ!」と拍手しそうになってしまった。

次に打った客が下りのパットを大オーバーした。
打った客がそのボールの場所に行く前に、返しのパットが戻ってきた。

『誤球かな?』と思ったが、その近くに他の客はいなかった。

私とDキーパーは驚いて目を見合わせてしまった。
信じられないことに、キャディが返しのパットを打ったのである。

台湾では良くあることなのか?
はたまた、ローカルルールでキャディもグリーン上では1打だけ打つことが認められているのか? 

キャディがピンを持ち、客に向かって「ここに打て」とカップの10cmくらい脇を、ピンの一番下の部分でグリーン上を叩いている。

日本のグリーンキーパーが見たら、気絶するかもしれない。
あれではグリーンが良い状態な訳がない。

客がパットを僅かに外したが、同伴プレーヤーから“OK” が出たのか、キャディはボールを拾わず、ピンでボールを打ち返した。
ナイスタッチであった!

このコンペは日本人のようである。
結局3パーティが通過しても旗の位置は動かなかった。

誰もワンオンしなかったらしい。
虚しく小旗はお持ち帰りとなった。

9番グリーンを終え、10番のティには客だけがドライバーを持って上がってくる。
中にはアイアンしか打たないアイアンマンもいる。

キャディはティショットが見える位置にある“檻”へと歩いていくが、途中9番グリーンと“檻”を結ぶ、釣り堀の中の浮き島のような橋を渡りながら、釣り堀の水で自分のタオルを濡らしたり、タオルをブンブン振り回したり、とても大らかで急ぐ様子など微塵もない。

“檻”に入ったキャディはティショットのボールを見る気などさらさら無く、おしゃべりに熱中している。

ボールの行方はプレイヤー自身が見届けるシキタリとなっている、らしい。

上から見ていると、10番フェアウェイに変な筋が付いているので、「下に降りて見てみよう」とDキーパーが言った。
私たちは、ある組のティショットが終わったと同時に、フェアウェイに降りていった。

フェアウェイに近付いて直ぐに、「なんだこりゃ?」と言ってしまった。
80%は雑草である。

上から見えた筋は、雑草が織り成す模様だったのである。
これを見て皆が、『なんだよ、ウチのコース、今日にでも本オープンできるじゃん!』と思ったのだった。

今の時点でコースの状態も、キャディの教育も完全に抜き去っている。

しかしそれでも、『このコースで一度プレイしてみたい!』と駆り立てるものがある。

その理由は何と言っても、ここの優秀なキャディ達である。
一緒に18ホール回ってみたいものである。

きっと18ホール笑いっぱなしか、思いっきり頭に来て喧嘩するかのどちらかだと思うが。
         

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043 李 碧霞(リ・ピーシア)

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【043 李 碧霞(リ・ピーシア)】

私が初めて彼女の存在を知ったのは、9月の中頃だった。

ビザの再取得を終えて台湾に戻って直ぐ、8月下旬に入った新キャディの教育を始めた時だった。

私に付いたキャディは、40才前後の少し落ち着きの無い小姐だった。
しかし、ティショットが終わった後の彼女の動きは素晴らしかった。

ボールの落ちた方向に真っ直ぐ、脇目も振らず物凄いスピードで歩いていく。
学生時代には競歩で鳴らしたに違いない。

一般的に台湾のキャディの動きはスローである。
その中で彼女の動きは際立っていた。

飼い主が投げたボーンを、犬が尻尾を振って取りに行くかのような喜びが、彼女の背中にはみなぎっていた。

そして、逸早くボールを捜し当てた彼女は、私に向かって「在這里〜っ!(ここよ〜っ!)」と、飛び上がらんばかりに手を振って教えてくれる。

彼女は自分が担当でない時も、無意識のうちに真っ先にボールを探しに行っている。
その彼女を、劉小姐がいつも「あなたの出番じゃないでしょ!」とたしなめる。

我に返った李 碧霞は照れながら戻ってくる。
彼女はキャディになるべくして、この世に生まれてきたに違いない。

李 碧霞が劉小姐を担当した時に、おもしろいことがあった。

緊張していたのか、あるいは慌ててしまったのか、いきなり劉小姐のことを「劉先生( Mr.の意)」と呼んでしまった。

劉小姐も怒れずに呆れていた。

李 碧霞は、私の時もやってくれた。
彼女は私の名前が呼びにくいらしい。

ある日、私に向かって、「ニイハオ、オカ、オカ……、オトノさんっ!」と、元気良く言ってくれた。

“お殿さんっ!”と呼ばれたのは、私の生涯、これが最初で最後に違いない。
悪い気はしなかったが、大笑いしてしまった。

数日後、休憩の時にそのことで李 碧霞をからかうと、その答えが洒落ていた。

「私は、あれ以来、毎晩夢の中でも『オ○さん』と言えるように練習していますっ!」

プロのキャディ、李 碧霞の名前が日本で聞かれる日も近いであろう。
そう、彼女の名は李 碧霞!                           


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